第2章 幼馴染と姉と僕

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 ルイみたいにチームメイトにはなれないイルにとって、その姿を見れるのはこの時しかない。だから、たくさん試合をして欲しい。  こうやって幸隆の頑張る姿を見たいし、大きな声を出してはまだできないけれど、応援したい。 「幸隆!」  その気持ちが伝わったのか、幸隆があのピッチャーからヒットを打った。  ここに来て初めてのヒットだ。  相手のピッチャーは年下に打たれた事が相当悔しかったのか、その後のピッチングは乱れ、あっという間に0-3の点差がついた。  押し出しもあってのその点差に相手チームのムード は乱れ、相手監督はそのムードを打破する為にピッチャーを変える手段に出た。  でもそれがいけなかった。  幸隆はピッチャーが変わった瞬間にその一振りで更に勝利へと導いたのだ。  ヒュッと投げられたボールをホームランにした幸隆は、喜ぶ友人達とは違って至って冷静にホームを周り、いつも通りのクールな態度でホームベース踏んだ。 「すごーい! 幸隆すごい!」  打たれた相手はさっきと同じ四年生。  まさか、二つも年下の人間に投げた瞬間ホームランにされるとは思ってもいなかったらしい。  数秒、動かなかった。
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