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イルは楽しそうにしている二人をその場で見つめ、ただ、自分の無能さに悲しさを覚える。
さっきまであった自信なんか、二人を見ていると直ぐに消えてしまう。
自分の居場所はもう、幼馴染と姉の所ではないのかもしれない。
撮影している時の自分が、今の自分の居場所なのかもしれない。そう思ってしまう。
「ねぇ、君」
「え……?」
突然、背後から声を掛けられた。
その声の方を振り向くと、一人の球児がこっちを見て笑っていた。
「あの……」
その球児は六年生くらいだろうか。身体付きは逞しく、ガッシリした姿をしている。
「可愛いね。三年生?」
「に…二年生です……」
イルは上級生に話し掛けられた事に恐怖心を感じ、バクバクと心音を激しくさせながら、小さな声でそう答えた。
「どこ小? ここにいるって事は西小?」
「は……はい……」
「俺、南小の六年」
その南小の球児はそう告げると、イルが座る席の隣に図々しくドカッと座って来た。
イルはビクッと身体を強張らせ、その男の子から距離を取る。
「可愛いね。すげーその服似合ってる」
「あはは……どーも……」
まさか、小二でナンパに合うなんて。
南小の人達はませているとの噂を聞いた事があったが、まさかそれが自分に向けられる日が来るとは……思いもしない。
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