第2章 幼馴染と姉と僕

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 イルは母の方を見るが、試合が終わって直ぐに選手の元へと行ったのか、もう既にそこにはいなかった。 (助けてっ……)  イルは心の中で助けを呼んだ。  誰でも良い。この状況をどうにかして欲しい。 「おい」  そんな時、聞き覚えのある声がイルのスカートに触れる男の子に向かって掛けられた。 「はぁ? なんだよっ……イッテッ」  そして、男の子の手を力強く掴むと、その痛みに手が離れ、イルはその瞬間に男の子から離れた。 「幸隆ッ!」  イルは助けに来てくれた幸隆の背後にササッと隠れ、幸隆のユニホームをギュッと掴む。 「お前さっき試合出てた奴だろ」 「そうだけど」 「確か二年だよな? 二年のくせに何生意気な事してんだよっ」 「生意気? 人の物に手を出そうとしてるからだろ」 「ゆっ、幸隆!?」  幸隆はそう言うと、イルの冷たくなった手をぎゅっと握り締め、相手を睨んだ。 「コイツは俺のだ」  そして、そうハッキリと相手に告げるのだった。 「だから諦めろ」 「幸隆……」  まさかそんな事を幸隆が言うとは思ってもいなかったイルは、その言葉に心音が激しくなり、冷たかった手が熱くなる。  少し見上げる幸隆の横顔。それが今まで見た中で一番かっこ良く見えるのだ。
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