第2章 幼馴染と姉と僕

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 相手は幸隆のその言葉に憤りを見せていた。  そんな事を言う幸隆を「生意気だッ」と言って、幸隆の胸ぐらを掴んだ。 「幸隆ッ!」  相手との身長差がある幸隆の足は少しだけ浮いていた。首も締まっているだろう。  なのに、幸隆は顔色一つ変えず、至って冷静に相手を見詰めていた。 「謝れ。生意気でしたって言って謝れッ」  ググッと幸隆の首元を締めながら上に上げる相手。イルは相手の手を掴んで「やめてっ!」と叫ぶ。  なのに、幸隆だけは余裕の笑みを浮かべていた。 「ハァ? 準決勝止まりがよく言うよ」 「!」 「優勝してから言えよ、デブ」 「なっ……」  幸隆はそう言うと右手を相手に伸ばし、自身の首元を掴んでいる腕を掴んだ。 「イデッ!」  そして、グッと相手の手首を掴み一瞬締めた。すると、その握力が強かったからか、相手はその痛みにパッと手を離した。 「相手にならなってやる。ただし、決勝に来ないと無理だけどな」  幸隆はそう言うと相手をギラッと睨み付け、イルの手を優しく掴み、来た道を歩き出した。
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