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イルは幸隆に手を引かれ、トコトコと後を付いて歩く。
けれど、少し高めのヒールは幸隆の歩く歩幅とは合わず、少し躓いてしまった。
「大丈夫か?」
「う、うん。ごめん……」
背後であの男の子が何かを叫んでいるのが分かっていた。でも、そんなのイルの耳には入って来ない。
だって、幸隆が優しい。イルが躓いた後、ちゃんとイルの歩幅に合わせて歩いてくれるのだ。
手も繋いだままで……。
「幸隆、どこ行くの?」
イルは幸隆がどんどん球場から離れているのに気付いた。
母が待つ駐車場に向かうとばかり思っていたイルは、幸隆がそこには向かっていない事にようやく気付いた。
「何処って、帰るんだよ」
「帰る? ママ、車で来たんだよ?」
イルは母親と一緒に車で来た。だから、帰りはルイも連れて車で帰ると思っていた。勿論。幸隆も乗せて。
「ルイ、さっきの試合で突き指したらしくて、さっきおばさんと二人で病院に行った」
けれど、幸隆のその言葉にイルの足がピタッと止まってしまう。
「え? ええ!? そうなの!? ルイ大丈夫なの?」
さっきはそんな風に見えなかったのに……試合が終わって痛くなったのかもしれない。
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