第2章 幼馴染と姉と僕

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 イルは幸隆に手を引かれ、トコトコと後を付いて歩く。  けれど、少し高めのヒールは幸隆の歩く歩幅とは合わず、少し躓いてしまった。 「大丈夫か?」 「う、うん。ごめん……」  背後であの男の子が何かを叫んでいるのが分かっていた。でも、そんなのイルの耳には入って来ない。  だって、幸隆が優しい。イルが躓いた後、ちゃんとイルの歩幅に合わせて歩いてくれるのだ。  手も繋いだままで……。 「幸隆、どこ行くの?」  イルは幸隆がどんどん球場から離れているのに気付いた。  母が待つ駐車場に向かうとばかり思っていたイルは、幸隆がそこには向かっていない事にようやく気付いた。 「何処って、帰るんだよ」 「帰る? ママ、車で来たんだよ?」  イルは母親と一緒に車で来た。だから、帰りはルイも連れて車で帰ると思っていた。勿論。幸隆も乗せて。 「ルイ、さっきの試合で突き指したらしくて、さっきおばさんと二人で病院に行った」  けれど、幸隆のその言葉にイルの足がピタッと止まってしまう。 「え? ええ!? そうなの!? ルイ大丈夫なの?」  さっきはそんな風に見えなかったのに……試合が終わって痛くなったのかもしれない。
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