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そんなイルの心情を察知したのか、幸隆がそっと手を伸ばしてイルの白い頬を優しく抓った。
「いひゃっ」
「俺がいるだろ」
「ひぇ……?」
「俺がいるって言ったんだ。お前は何も心配しなくていーんだよ」
「ゆひひか……」
自信に満ちた顔。同じ年とは思えないほどの凛々しい姿。そんな幸隆に、イルはまた心臓を撃ち抜かれ、身体が熱くなる。
「行くぞ」
「う、うん」
幸隆はそう言うと繋いでいた手を更に強く握り直し、イルの歩幅に合わせながら歩き出した。
イルは幸隆の横顔をまた見詰め、さっと下を向いて頬を染める。
なんでそんなにカッコいいのだろうか。
ルイが言っていたように、幸隆が女の子からたくさんの好意を抱かれていると言うのが痛い程分かる。
本人に、どうしてそんなにかっこいいのか言ってしまいたいくらいだ。……言えないけれど。
「ん? 俺の顔に何か付いてるか?」
「つ、ついてないよっ。なんでもないっ!」
横顔を見詰め過ぎたからか、幸隆が気付いてしまった。イルは慌てて空いている左手を振り、見てないと告げる。
「ふっ。慌て過ぎ」
「だっ、だって……」
「イルは俺が好きだなー」
「え……な、何言ってんの!? すっ、好きじゃないし!」
突然の幸隆のその言葉に更に慌て出すイル。こんなの肯定しているようにしか見えない。
「まぁ、今はそう言う事にしとくよ」
「いっ、今だけじゃないしっ! ずっとだし!」
小さな手と手。繋いだその隙間に汗が滲む。
ここで、パッと手を離したら良いのかもしれない。
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