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でも、そんな事はできない。このままずっと繋いでいたい。
「腹減った……どっか寄るぞ」
「え? あ、うん」
イルは自身の天邪鬼さに嫌気がさした。
ここで自分の心に素直になれば、何か変わるのかもしれない。
幸隆に〝好き〟だと告げれたら、この心の中にあるモヤモヤが消えるのかもしれない。
でも、ルイの顔がチラついて何も言えない。
(あ……)
イルはふとガラス窓に映った自分と目が合った。そこには、男の子と女の子が手を繋いでいる姿が映っていた。
男の子は幸隆。そして、女の子はイル。
ガラス窓に映る二人はどう見ても男の子と女の子。でも、現実は違う。
(もう少し……このままでいたいな……)
この時間がもっと増えるのなら、イルは一生この姿のままでいたい。そう思った。
偽りのこの姿を、幸隆の隣にいる為に。
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