第3章 秘める心

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 両手には大量の資料やバインダーがあり、生徒会の仕事をしている途中のようだ。  生徒会長を二年連続でしている邦道は、日々その仕事で忙しいと言っていた。あと、個人的に経済や経営の勉強もするようになって、更に時間に余裕が無い生活を送っているんだとも言っていた。 「少し待つよ」  そう言って、イルは邦道の手から半分とはいかないけれど自分が持てる量を持った。 「受験生なのにそんなにする事増やして良いの?」 「受験生? 俺にはそんなの関係ない。勉強なんてしなくてもここ(高等部)のレベルならそんなのしなくても入れる」 「特進でも?」 「俺を馬鹿にしてんのか?」 「ふふっ、少し」  イルはそう言って邦道を見詰め、クスクスッと笑う。その表情に、邦道が小さな溜息を吐いた。 「お前くらいだ。俺にそんな事を言うのは」 「そりゃ、付き合い長いからねー」  確かにこう言うやり取りを邦道とできるのはイルと幸隆くらいだろう。  矢神グループの御子息に冗談や軽口を言えるのはイル達だけしかいない。  あと、外面が良い邦道が本性を出せるのもイル達の前だけ。だから、こんな風にあからさまに態度に出すのも普通の人の前ではありえない。 「そう言うお前は高校どうすんだよ。高等部にそのまま進むんだろ?」 「え……? うん、一応」 「一応?」  曖昧な返答。それについて勘の鋭い邦道が気付いてイルに言う。 「幸隆か?」 「なっ! ち、違うよ! 幸隆なんか関係ないよ!」 「嘘つけ。あいつ、県外から何校かオファー来てんだろ?」 「う、うん……」  そうなのだ。この間ルイから聞いて知った事。  幸隆が中等部からそのまま高等部に上がらないかもしれないと言う事。
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