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それを、つい最近知ったのだ。
「沖縄から北海道……各県から幸隆を欲しいと言ってる監督が大勢いるらしいな。職員室で聞いた」
「……そうみたい」
まさか、そんなすごい人間になっていたなんて知らなかった。
野球が上手いとは知っていたが、まさか、そんな風に周りから言われるほどすごい選手になっていたとは思ってもいなかった。
イルと一緒にいる時の幸隆は野球なんかしていない。ただ、イルの側に黙っていてくれる幸隆だった。
「姉は海外に行くんだっけ?」
「うん。アメリカに留学してソフトボールを磨くんだって」
「そうか……」
「ルイらしいよね。僕なんか……海外に行こうとも思わない」
行動力があるルイ。
例え一人だとしても怯む事なく進んで行く。
イルにはそんな事考えられない。
「幸隆も県外に行くのかな……僕、幸隆からそう言うの相談された事ないから」
そう言う相談は今まで幸隆からされた事はない。
野球に関係した話しはルイとしているようだから、この進学の話しもルイには相談しているだろう。
この頃、二人で何かを話しているのを見掛ける。それを見て、イルはいつも二人から距離を取るように部屋から消える。
「幸隆はもう決めてると思うんだよね。僕が知らないだけでさ」
その事に関してイルは執拗に聞いたりはしない。
本音はとっても聞きたいけれど、でも、天の邪鬼な自分は幸隆の前では強気になってしまう。
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