第3章 秘める心

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 だから、幸隆はイルには言わない。  イルが幸隆に聞かないから……。 「お前、幸隆いなくてやっていけるのか?」 「え? やっ、やっていけるよ! ゆ、幸隆なんか別に必要ないし、どっかに行っても僕は別に気にしなーい」  そう言って、ハハハッと笑うイル。でも、そんなイルのおでこに邦道はペシッと優しくデコピンをしてきた。 「いた……」 「目が笑ってねーんだよ」 「……だって」  どうしたらい。このまま一緒だなんて絶対に無理だ。  イルは確実にこのまま邦道と同じように高等部の特進に進む。でも、幸隆は……幸隆は、違う。 「このままずっとなんて無理だもん……」  そんなの、自分が男で生まれてしまった時から知っている。  幸隆とずっとなんて絶対にありえないと言う事を、ずっと前からイルは悟っている。 「いくら女の子よりも可愛くても、僕は女の子じゃないからね……」 「イル……」 「幸隆がどこの高校に行こうとも僕には関係ないし、幸隆が大好きな野球を思い切りできる所に行ければ、僕はそれだけで嬉しい」  時々こっそり試合を見に行こう。  元気な姿を見て、声を掛けずに帰ろう。もし、幸隆に彼女ができて、スタンドにその彼女がいたら、ペコっと挨拶をして「幸隆をよろしくね」っと伝えよう。 「僕達も少しずつ大人になってるって事だよね……」  大人になるからこそ訪れる事。
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