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それは、環境が少しずつ変わって行くと言う事。
そして、それは決して自分が決める事はできないと言う事。
幸隆がそうしたいと思っている事に、自分なんかが口出しできる立場ではない。
イルは常にそう思っているのだった。
「お前が……」
「え……?」
「お前が行くなって言ったら、幸隆はお前の側から一生離れないんだろうな」
「……。ははっ、そんな事ないって……幸隆にはルイがいるもん」
自分なんかよりも頼りになる存在。
それが、幸隆の近くにいる。
「お前さ……」
「なに?」
「……いや。幸隆も哀れだなって思っただけ」
「哀れ? なんで?」
イルは邦道の言っている事が分からなくて小首を傾げた。
そんなイルに、邦道は「何でもない」と言って生徒会室のドアを開く。
「まぁ、時間もまだあるし、そのうち本人にどうするのか聞いてみれば良い。あいつはそれを待ってると思う」
「……そ、そんなわけないよ」
イルは邦道のその言葉に頬を染める。
幸隆が待ってる? そんなまさか、ありえない。
「ま、まぁ。そのうち聞いてあげても良いかな」
でも、もしそうならば、何気無い会話の中で自分から聞いてみるのもありなのかもしれない。
幸隆だって、聞いて欲しいかもしれないし……。
「……お前ってほんと素直じゃないな」
「う、うるさいっ」
イルは持っていた荷物をテーブルにバサッと置くと、邦道に向かってあっかんべーと舌を出し、パタパタっと生徒会室から出て行った。
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