第3章 秘める心

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 そして、一人で廊下を歩いていると、グラウンドが目に入りピタッとその場に立ち止まる。  二階からの眺めは抜群だった。  グラウンド全体が見えて、一つのグラウンドで沢山の部活が練習に励んでいた。勿論、野球部もその中にいた。  野球部は成績を残しているから三分の一を占領していて、白いユニホームを着ている選手が三十人ほどその面積に散らばっているのが見えた---その中に幸隆もいた。  部活が終わったばかりなのか、後輩達は疲れ切ったようにタラタラと片付けをしていて、そんな中でまだ体力のある幸隆はテキパキと一人で片付けていた。 「普通なら後輩に全部任せるのに……」  部活の最年長。しかも、キャプテンを務める幸隆。なのに、後輩の手伝いも面倒も全て一人で見る。  周りの三年生達なんて端でもう雑談しているのに。 「ほんと、昔から面倒見が良いんだら……」  そう思っていると、ソフトボール部の練習も終わったのか、ルイが突然幸隆に駆け寄り、背後から抱き付き始めた。  そんな二人を見て、野球部の三年生達が二人に群がる。  幸隆はそれに慣れているのか、ルイのその行動に微動だにせず、黙々と片付けを続けていた。そんな幸隆に、ルイが笑いながらおぶさった。  窓が閉まり声は聞こえないが、野球部の人達はそんな二人を見て冷やかしているのが見ていて分かった。  そんな二人を見て、グッと胸が苦しくなるイル。  やっぱり、あの噂は本当なのかもしれない。 「……付き合ってるのかな」  一昨日たまたま聞いてしまったソフトボール部の子達の会話。  それは、幸隆とルイが付き合っているという内容だった。
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