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最初は、そうだったら自分に先に言っているはずだと思い、気にしないようにしていたが、今、この二人を見ているとそれが事実にしか思えなくなる。
それに、ルイは気付いている。イルが誰を好きなのか。
そして、イルも知っている。ルイが誰を好きなのか……。
「双子って辛い……」
双子だからこそ同じ人に惹かれるのだろうか---幼馴染のその人に。
「イル」
「え……?」
窓の外を見詰め、今にも泣きそうな顔をしていると、下から自分の名前を呼ぶ声がした。
イルは慌てて窓を開け、下を見る。すると、そこにはさっき遠くにいたはずの幸隆が直ぐ下に立っていたのだった。
「幸隆!?」
まさか、こんな離れた場所にいたのに気付いていたなんて。イルは驚きのあまり幸隆の名前を呼ぶ声が裏返る。
「帰るぞ」
「え? あっ、うん」
幸隆にそう言われ、イルは慌てて下に降りた。そして、下駄箱で一人立っている幸隆に駆け寄った。
練習で汚れたユニホームは砂で茶色くなっていて、頬にも砂が付いていた。
着替えもせずに着たらしい。
「遅い」
「おっ、遅くないよっ。幸隆が早いんだよ」
イルはそう言って、幸隆の隣にそっと並ぶ。
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