第3章 秘める心

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 幸隆は疲れた顔をしていて、イルは鞄の中に密かに隠しているキャラメルを幸隆に渡した。 「部活、疲れたんでしょ? はい、あげる」 「さんきゅ……」  幸隆はそのキャラメルを受け取ると、ひょいっと口に放り込み、コロコロと口の中で転がしていた。 「甘い……」 「そりゃキャラメルだもん。でも、疲れた後は甘い物欲しくなるでしょ?」  その為にイルは常に鞄の中に甘い物を忍ばせている。  自分も甘い物が好きだからと言うのもあるが、こんなに一人では食べない。それに、夏には塩分が入った飴も用意している。それは幸隆の為だけに用意した飴で、それをイルは一個も食べない。  イルはイルなりに幸隆の身体を密かに気遣っているのだった。 「ねぇ、なんで僕がそこにいるって分かったの?」  窓は閉まっていた。  それに、イルがいたのは二階だった。普通ならあそこからなんて見えないはず。なのに、幸隆はイルがそこにいる事に気が付いた。 「はぁ? そんなの分かるだろ」 「? 分かんないよ」  前にも思った同じ事。  小学校低学年の時に違う学校の高学年の男の子に絡まれた時、同じ事を思った。  何故、幸隆はそこにイルがいると分かるのだろうかと。 「お前の事、常に探してるから」 「え……?」  幸隆は歩きながらそうイルに言った。それは本当にサラッとしていて、一瞬我が耳を疑うほどだった。 「部活の時は野球しか頭にねーけど、それ以外はお前の事だけを考えてる」  幸隆はそう言うとピタッとその場で立ち止まり、イルを見詰める。
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