第3章 秘める心

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 それに釣られてイルも静かに立ち止まった。  辺りには人はいない。  夕暮れの橋の真ん中には、イルと幸隆だけがそこを渡っていたのだった。 「お前もそうだろ?」 「え……?」 「俺が、常に頭の中に存在してるだろ?」  そう言って、イルにゆっくりと近付いて来る幸隆。イルは橋の手摺に背中を付け、幸隆に前を塞がれる形になり前しか見えない。  そう。幸隆の顔だけしか見えない。 「俺の気持ち知ってんだろ?」 「幸隆の……気持ち……?」  イルは幸隆にそう言われ、戸惑いの顔を見せる。だって、幸隆の気持ちなんか分からない。  一番近くにいたはずなのに、今の幸隆の考えている事は今までにないくらい何も分からない。 「昔から、俺はお前しか見えてない。たぶん、これから先も……お前……イルしか見えない」 「!」  突然の出来事に、イルはフリーズしてしまう。  もしかして、今、自分は幸隆に告白されているのではないのだろうか。  いや、自意識過剰なんかじゃない。ちゃんと、言われている。 「でも幸隆はルイと……」 「ルイ? あぁ、周りはなんか言ってるみたいだな。そんなわけねーのに」 「そ…そうなの……?」  幸隆のその言葉に心の中でホッとしてしまうイル。幸隆がルイと付き合っていなかったと知り、急に心の底から湧き上がるように安堵が込み上げてきた。
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