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驚いたイルは目で母親に助けを求めた。
けれど、母親はそのルイの言葉に「名案ね!」そう言ってイルにルイが着るはずだったドレスを当てがった。
「イル可愛い! すっごく似合うわ! うん、そうしましょう!」
「え……?」
本気で? そう思ったが、隣を見るとルイはもう既にイルの服を着てしまい、イルが着る服はそれしか残っていなかった。
「さ、早く着て! 泊まりで来てくれるお客様が空港まで着いたって連絡が来たわ。お出迎えに行かないといけないの!」
そう言われ、イルは母親に急かされながらワンピースを着てしまうのだった。
初めて着るワンピースは、ヒラヒラの白のフリルが強調するようなお姫様のような形で可愛らしい物だった。
「やっぱり良いじゃん。私もイルも似合ってる」
「で、でも恥ずかしいよ……」
「そう? この方がしっくりくると思うけど」
「で……でも……」
しっくりくる。そう言われても、イルは男の子。しっくりくると言われても困ってしまう。
「さ、外出るわよ」
「え? も、もう? ぼく、お留守番……」
してる。と言いたかったが、使用人はそれぞれ自分の仕事に忙しそうで、そんな我儘は通るわけがなかった。
「大丈夫よ。私達同じ顔なんだから、言わなきゃバレないって」
そう言って、ルイは自信に満ちた顔をイルに向ける。確かに、瓜二つの顔をしている自分達ならバレる事はないだろう。
両親でさえ間違える事もあるほどなのだから。でも、唯一、間違えない男が一人いる。
確実に言い当てる幼馴染が一人いる。
イルはヒラヒラのスカートを両手で抑えながらルイと共に外に出て、 その人物が隣の家から出てこないかを確認しながら車に乗ろうとした。
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