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そんな幸隆の表情を見て、自身の唇にそっと触れるイル。
その部分が特に熱く、熱を帯びていた。それは段々と身体中に染み渡り、色白のイルの顔も林檎のように赤く染める。
「初めて……だったよな?」
「あ、当たり前じゃんっ!」
幸隆はそんな事は知っているくせに、ニヤニヤ笑いながらイルにそう聞いて来る---たぶん、確認したかったようだ。
これがイルにとってファーストキスだったのかを。
「そ、そっちは……した事あるの?」
イルは視線を伏せぎみにして幸隆にそう小さな声で幸隆に尋ねてみた。
その返答が分かっているのに、幸隆の口から聞きたかったのだ。
「お前が初めてなら俺も初めてに決まってんだろ」
なに変な事を聞いて来るんだ。そう言いたいような表情で、幸隆はイルにそう言った。
「そ、そっか……初めてなんだ」
イルはにやける口元をどうにか堪え、ふと上を向く。
すると、そこには夕焼けにオレンジ掛かった幸隆の顔が、またイルに近付いて来ていた。
「イル……」
それに気付きながら、イルは動かなかった。
(幸隆……)
イルはそっと目を瞑り、二度目のキスを待った。
そのキスは一度目と同じく優しくて、イルはその場で泣きそうになった。
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