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その後、幸隆が「帰るか」そう言ったので、イルは無言でコクッと頷いた。
幸隆は何も無かったかのように歩き出し、イルもその横をぴったりとついて歩き、橋を渡り終える。
そして、チラッとだけ幸隆の方を見てみる。すると、幸隆の耳が今まで見た事がないくらい真っ赤になっている事に気付いた。それを見て、イルはプッと吹き出して笑ってしまう。
「なに笑ったんだよ」
「ううん。なんでもない」
そう言って、首を横に降るイル。なんでもないなんて嘘だ。
だって、幸隆がなんでもないように装っている事に気付いてしまった。そんな幸隆を、愛おしいなんて思わない人間なんていないと思う。
本当は幸隆も緊張していたんだ。
「幸隆も人間なんだね……」
普通を装いながらも、内心はイルと同じように緊張していたようで、そんな幸隆に気付いてしまったイルは、また笑ってしまう。
「人間なんだねって何だよ……」
その言葉に、幸隆も釣られて笑っていた。
宇宙人とでも思ってたのか? なんて言って、イルの頭にポンッと優しく手を置く。
その笑みはとても甘かった。
それは、もう一度キスをして欲しい。そう思ってしまうくらいに……。
「ね、ねぇ幸隆」
「ん? なんだ?」
「幸隆は、高校どうするの? 行く所……決めた?」
イルは意を決して幸隆に聞きたかった事を聞いてみた。
もし、決めたのなら今聞きたい。
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