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ルイからではなく、幸隆の口から直接聞いて、自分の進路もそろそろ決めたい。
イルは幸隆が何処の高校に行こうとも後を追う決意を固めた。
「高校? そんなのお前と同じ所に決まってんだろ」
「え……?」
けれど、幸隆の返答はイルが思ってもいなかった返答だった。
「で、でも、色んな所から声が掛かってるって聞いたよ! 強豪校の監督が幸隆を欲しいって言ってるってくに君も言ってた!」
イルは幸隆のユニホームを無意識にぎゅっと掴み、上目遣いで幸隆にそう言う。すると、幸隆はまたさっきと同じ顔をして、呆れたように溜息を吐く。
「確かにそれはあった。でも、金積まれてもレギュラー確実って言われても、俺はもう行く場所は決めてたからその話しは全て断った」
「そ、そうなの?」
「あぁ」
「でもなんで? 高等部はそこまで野球部強くないはずだよね?」
高等部の野球部は、甲子園に行けるほど強くはない。最高成績は地方大会で準決勝に進んだくらいで、決勝までは行けていない。
だから、一番甲子園から遠ざかっている高校とも言えた。
「幸隆には甲子園に行って活躍できる力があるんでしょ? なのに……なんで高等部みたいな弱い所に……」
勿体ない。そんな言葉がイルの口から溢れた。
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