第3章 秘める心

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 だってそうでしょ。幸隆には才能があり、昔から野球に関してはズバ抜けて群を抜いてるそんな人間が、上を目指さないわけにはいかない。  それに、毎日の日課は父親に買ってもらったグローブとバットの手入れで、それを欠かした事がない人間が、甲子園という大きな大会を夢見ないわけがない。  周りからの期待だってある。 「皆、強い所に行くって思ってるよ……」  ルイがこの間イルに言っていた。幸隆は絶対に海外で活躍できるほどの力があり、年代別の日本代表にだってなっている男なのだから、こんな日本に留まるのは勿体ないと。だから、一緒に留学しないかと誘ったと。  でも、幸隆は首を縦に振らなかった。その理由は誰も知らない。 「お前がいるだろ」 「え……?」  幸隆はそう言って、ユニホームを掴むイルの手をギュッと掴んだ。その瞬間、イルの心臓がドクンッと大きく鳴った。 「俺にとったらお前がいない場所なんて行く価値さえない」 「!」 「お前がいない所に行くとか、俺には考えらんないからな」  だから断った。そう、幸隆は迷いも無くイルに言った。 「そ、そんな理由で? ぼ、僕なんかいなくたって幸隆なら大丈夫でしょ?」  いつも平気な顔しているくせに、今、そんな事を言うなんて……ズルイ。 「それはクラスだけが違うだけだろ? 壁一つの距離くらいなら、まだ平気だ」  そう言って、幸隆は愛おしそうにイルの頬を優しく摩る。
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