第3章 秘める心

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 でも、イルは自分の気持ちを、今、伝えるのができなかった。それは、たぶん幸隆もその理由が分かっている。  分かっているからこそ、イルに告白の返答を聞いて来ない。 「またね……」 「あぁ、また明日な」  イルの気持ちには気付いている。  イルが幸隆を、幸隆がイルを想っているほど好きだと言う事は絶対に知っている。  けれど、言えずにいるのは、姉の存在があるからだど、幸隆も分かってくれている。 「……言わないと」  イルも幸隆が好きだと、ルイにも伝えないといけない。それを言わない限り、イルは幸隆と付き合う事はできない。  イルにとって、ルイも大事だから。 「ただいま……」  ガチャッとドアを開け、玄関を見る。すると、ルイのローファーだけが揃えられて真ん中にあった。  両親は出掛けているらしく、二人の靴は無い。 「おかえりなさい、イル様」  靴を脱いでいると、家政婦のみつこがイルを迎える。 「みつさん、ただいま」  家政婦のみつこは、イルが産まれる前からここで働いてくれている老女で、若い頃に子宮の手術をしたらしく、子供が産めない身体の女性だった。  だから、イルの両親を本当の子供の様に可愛がり、イルやルイの事を自身の孫のように可愛がってくれていた。  愛が溢れている女性。それが、みつこだとイルは思う。
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