第3章 秘める心

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 こんな風に優しい心を持つ人間になりたい。何度もそう思う事がある。けれど、そう簡単にはみつこの様に温和にはなれない。 「今日は何か良い事でもありましたか?」  突然みつこがイルの顔を見てそう聞いて来た。その言葉に、イルは驚きと共に動揺してしまう。 「え! な、なんで?」 「ふふっ。みつには何でもお分かりですよ」  そう言ってみつこは嬉しそうに笑う。  やはり、勘が鋭いみつこには良い事も悪い事も隠せないようだ。 「……ちょっとね」  そうイルが頬を染めてみつこに言うと、みつこは嬉しそうに「それは良かったですね」と笑顔で言ってくれた。 「夕御飯は何が良いですか? ルイ様はお肉とのご要望がありましたが、イル様は何が食べたいですか?」 「僕? 僕もお肉で良いよ。サラダ付きでお願いします」 「はい。かしこまりました」  イルはみつこに笑顔でそう言うと、階段を上がり部屋へと向かう。  すると、ルイがイルの部屋の前で立っていた。イルが帰って来たのに気付き、部屋の外で待っていたようだ。 「た、ただいま……」 「おかえり。遅かったね」  ルイはイルの部屋のドアに寄り掛かり、中に入れないように塞ぐ。それを見て、イルは重い空気を感じ取った。 「う、うん。ちょっと寄り道して来たから……」 「幸隆とでしょ?」 「え……?」  ルイはそう言って今にも泣きそうな顔を浮かべる。それを見て、イルはルイが幸隆の気持ちに気付いている事に気付いてしまう。
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