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そんなルイを見てしまい、何を言えば良いのか分からなくなったイルは言葉が出て来なくなってしまう。
それが尚更ルイをイラつかせてしまったようで、チッと小さく舌打ちをされた。
「なんで幸隆はイルばっかり優先するんだろう。さっきだって、一緒に帰ろうって言ったらイルの方に行っちゃうし……」
「え……?」
そんな事があったんだ。あの部活終わりに……。
イルは初めて知った事に、不謹慎にも嬉しくなってしまう。ルイの誘いを受けずに、イルの方に来てくれた。それが嬉しかった。
「嬉しい顔なんかしないでよ。ムカつくから……」
「う、嬉しい顔なんかしてな……」
「してる! 双子なんだから分かるに決まってるでしょ!」
そう言って、バンッとドアを叩くルイ。
「幸隆は絶対に渡さない。幸隆はルイのなんだから……」
「そ、そんなの決まってな……」
「じゃ、あんたの? なに? 幸隆に告白でもされた?」
「!」
どこまで気付いているのだろうか。
それとも、嘘がつけないイルのその表情を見て、観察しながら話しているのだろうか。
「ハハッ、嘘でしょ? 返事したの?」
「そ、それは……まだ……」
イルは今にも掴み掛かって来そうなルイを刺激しないように、そう小さく答えた。
「そう。なら、まだ私にもチャンスはあるって事よね?」
「え……?」
「だって、いくらあんたが可愛いくても、所詮は男なんだからね? そこ、ちゃんと分かってんの?」
「そ、そんなの……」
「それって、ちゃんと幸隆の事考えてるって言える?」
「それは……」
イルはルイのその言葉に言葉が詰まる。
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