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だって、そんなの最初から分かっている。
ずっとずっと、ずっと前から、幸隆の事を友人としてではなく違う好きだと自覚した時から、そんなの分かっている。
「あんたは良いかもしれない。でも、幸隆は違う。幸隆はね、絶対に周りから注目される人間になる。それをあんたはぜんぜん分かってない!」
「そんなの、分かって……」
「分かってない! もし、プロになったとして、恋人が男です。なんて周りに知られたら、幸隆は肩身の狭い人生になるんだよ! いくらあんたが女装して女に磨きかけても、男は男。本物の女じゃない!」
「っ……」
そこまで言われるなんて……イルはポロポロとその場で涙を流した。
「イルが良いなら私だって良いはずよ。幸隆はただ、男友達で一番近いのがイルってだけで、今はそれを勘違いしてるだけなんだから」
そう言って、涙を流すイルを見て勝者顔で笑うルイ。これでイルはもう幸隆に何も言わないと確信したようだ。
「それが大人になったら絶対に女である私を選ぶに決まってる。分かったなら、返事はノーか答えないままでいなさい」
ルイはそう言ってイルの肩をガシッと掴む。
「イタッ……」
「私が帰国した時に付き合ってたら、一生許さないから……」
そして、イルの細い肩をグッと力強く掴み、イルの耳元でルイはそう低い声で言った。
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