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イルは泣くだけで、頷く事も、言葉を発する事もできず、ルイが階段を降りる音だけが頭に響いた。
「幸隆……」
自分は何て浅はかな人間だったんだろうか……。
幸隆の事を誰よりも考えていると思っていたけれど、それは独り善がりだった。
それを、ルイに突き付けられた。
何も言い返せなかったのは、それが真実だったからだ。
いくらイルが女の子の姿をしていても、可愛い物を身に付けていても、男は男。それは、一生変わらない。
例え、イルが大事な部分を捨て、女に変わったとしても、元が男であった事には変わらない。
それに、イルは別に女になりたいと思ってはいない。
自分が女に生まれていたら……そう思う事はあるけれど、そうなりたいとは思わない。
中途半端と言えばそうかもしれないが、それでも、好きな物を隠すなんてもうできない。ありのまま、自分がしたいまま、正直に生きたい。
それを、幸隆は受け入れてくれた。そんなイルでも、幸隆は好きだと言ってくれたから。だから、大丈夫だと思った。
でもそれは大丈夫じゃないのだと、ルイの言葉で思い知らされた。
「僕じゃ……ダメじゃん……っ」
どんなに好きでも、好きだと言われても、この気持ちに素直になってはいけはい。
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