第3章 秘める心

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 だって、どうしたってイルは男なのだから、幸隆がイルを好きだと言ってくれても、その言葉を素直に受け入れた未来に光は見えない。 「返事……しなくてよかった……っ」  光があるとしたら、それはイルにだけだ。  イルだけが心も身体も満たされるだけで、幸隆には何も残らない。  イルがいくら幸隆に全ての愛を捧げたとしても、幸隆の為にはならない。 「あーあ……。なんで僕……女の子じゃないのかな……」  性別が違うだけでこんなにも辛いなんて、子供の頃はそこまで強く考えた事は無かった。 「女の子だったら……よかったのにな……っ」  いや、一緒にいられるだけで良いなんて、そんなのただの逃げだった。  子供も産んであげられないこの身体で、幸隆の事を好きになってしまった時点で、イルの想いは一生実る事は無いと決まっていた。 「なんで……好きだけじゃ駄目なんだろう……っ……うぅ……」  イルは泣きながらその場に泣き崩れ、両手で顔を覆った。下唇を強く噛み締め声を堪えたのは、下にいるみつこに心配をかけたくなかったからと、声を上げても無意味だと知っているからで、一ミリもルイに気を遣ったからとかではない。
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