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そんな二人を、イルは一歩後ろに下がった位置で見詰め、一度も声を出さずにただ歩いた。
「うーん、無理かなー。練習がびっしりあるし……あっちは日本よりも行事とかパーティーとかが多いから……帰れないと思う」
「そうか……」
「まぁ、長い人生そんな三年間もありだよねって思ってるから、楽しんで来るよ」
「あぁ、頑張れ」
「うん、頑張る」
空港のロビーの真ん中。人が大勢いる場所で、ルイは突然立ち止まり、幸隆の正面に立ってそう笑顔で返した。
こんな所でなんで急に立ち止まったのかと、イルはルイの行動が分からなくて、ただ、ルイの顔を見詰めるしかなかった。
「ねぇ、幸隆……」
「ん? なんだ?」
「……幸隆も野球頑張ってね。私、幸隆が野球してる姿が一番好きだから……」
「……あぁ。俺もお前に負けないように頑張るよ……」
幸隆はルイのさり気ない告白に動じる事なく、少し切ない顔でそう答えた。けれど、その言葉を聞いたイルは、ルイが初めて幸隆に対して口にした〝好き〟に、動揺を隠せない。
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