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ルイが幸隆にその二文字を口にするなんて……。間接的な言葉だったとしても、幸隆にはその気持ちは伝わっている。
それが、幸隆の目を見てイルには分かった。
「あっ、そろそろ時間だ。行かないと!」
ハッとなって時計を見たルイは、もう時間が無い事に気付き、そう口にした。
それを聞き、幸隆はルイに「またな」と声を掛ける。
サラッとした言葉は涙なんか誘わず、幸隆らしい見送りの仕方だった。でも、そんな別れ方にルイは不満そうだ。
「ほんと、幸隆って冷たいなー。行くな、とかないの?」
「……決めたのお前だろ? そんなの言うわけが無い」
「ハハッ、確かに……でも……」
そう言って、ルイが幸隆に一歩近付く。その距離の近さに、イルは一人、胸騒ぎが起きて二人の間に入りたくなった。
「ルイ……? んっ……!」
でも、それができなかったのは、ルイが邪魔するなと目で言っていたからだ。
その視線が怖くて、イルはルイが幸隆にキスをしたのを止める事はできなかった。
「……私が帰って来るまで誰の物にもならないで」
「……ルイ」
「お願い……」
「でも俺は……」
「私、アメリカ行ったら絶対良い女になって戻って来る。だから、それを見てから判断して……」
ルイはそう言うと、涙を浮かべ幸隆にニコッと笑った。
「またね……」
そして、手を振り、一度も振り向かないでその場から立ち去った。
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