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その笑みに、幸隆が憤りを見せたのに気付きながらも、イルは言葉の続きを止める事はできなかった。
「だってそうじゃん。幸隆がルイと結婚したら、同い年だけどルイは僕の姉だから、幸隆は僕の兄になるって事でしょ? ふふっ、なんか変な感じ」
幸隆が兄。そんな日が来たら、自分は一体どんな気持ちで二人を見詰めているのだろうか。
ちゃんと祝福してあげているのだろうか。
「子供は二人……いや、三人かなー」
「お前何言って……」
「あっ、でも。僕達双子だから、双子が産まれるって事もあるかもね……」
イルはそう言って、来た道を戻った。
そして、幸隆の顔を見ず、ただ前だけを見据えて進む。
「おいっ、イル……」
「ん? なに?」
例え幸隆に話し掛けられても、イルは背後にいる幸隆の方を決して見なかった。いや、見れなかった。
まともに幸隆を見たら、ルイとのキスを浮かんでしまい、泣きそうになる。
やっぱり、口では平気な言葉が出ても、好きな人が誰かとキスをしたのを見てしまったら、心まで平気でいられるわけがない。
そこまで自分は強くはない。そう思うと、涙が溢れそうになる。
ほんと、情けない……。
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