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嬉しすぎて涙が出た。それくらい、イルにとって嬉しい事だった。
(なんで……こんなキス……)
するの? そう聞きたくても幸隆が唇を離さないので聞けない。
「ん……ハァ…ハァ……」
二分、いや三分。深いキスが続いた。でも、ようやく唇が解放されたかと思ったら、幸隆がその逞しい腕でイルの身体をギュッと更に強く抱き締め、離そうとはしない。
イルは腫れぼったい唇で呼吸を整え、唾液で濡れた唇を舌で舐めた。
「好きだ……」
「っ……」
「俺は、お前が好きだ」
ストレートな告白。濁りもない、迷いもない告白。
「ルイじゃない。お前が……イルが好きだ」
幸隆らしい告白。
ほんと、なんて男らしい人間なのだろうか。諦める事すら許してはくれない。
「俺もだって……言ってくれ……」
幸隆は全て分かっている。分かっているからイルにこんなキスをしてきた。
どうしたらいい。どうしたら、この気持ちが晴れる?
「僕は……」
イルは幸隆の腕の中で考えた。考えたけれど、答えなんて出て来ない。
「幸隆には……幸せになって欲しい……」
素敵な家族。奥さんがいて子供がいて、野球をして。それが、幸隆にとって幸せな事。
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