第4章 またねのキス

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 そう、イルには思う。  なのに幸隆は決してイルを離そうとはしない。  誰かが来るかもしれないのに、見られているかもしれないのに、絶対にその手を緩めない。  今のイルの格好は普通の男の子の姿。側から見たら男同士で抱き合っていると直ぐに分かる。  なのに……。 「幸隆……もう離して……んぐっ」  でも、幸隆はイルの身体を更に締めるように強く抱いた。それは、息すらできないほどに。 「俺の幸せはお前と二人でずっといる事だ……。他の誰かなんていらない……イルだけいればいい……」 「ゆき…ちか……」 「いつになったらお前は素直になるんだ?」  ふわっと身体が離されて少しだけ距離ができた。  イルはそっと顔を上げて、切なそうに見詰めて来る幸隆の顔を見る。 「俺は諦めるつもりはないから。お前以外となんて……考えただけでも死ねる」 「! なっ、なに言って!」 「それくらい、俺はお前しか考えられない」  そう言って、幸隆は静かに歩き出した。  その背中は広く、けれど、抱き締めたくなるほど悲しそうだった。 「……き」  そんな後ろ姿に、イルは聞こえないほど小さな小さな声で幸隆に震える声で告げる。  でも、聞こえないでと心の中で強く願う。 「……僕だって同じだよ」  幸隆とは別の人間となんて死んだ方が良い。いや、死ねる。  これが全て答えなはずなのに、自分の性格がそうできない。  ルイみたいな大胆さや積極性があれば良いのにと思うけれど、それを全てルイに持っていかれた。  イルの中にあるのは、その反対の消極的な所と冷静さ。  ただ、それだけだ。
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