第5章 底のない愛

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「ねぇイル。これってどこに仕舞うの?」 「これー? これはね、たぶんここだよ」 「あ、ここか。……ごめんね、覚えてなくて」  高校最後の冬休み直前。愛永が生徒会室を整理したいと言い出して、それにイルと邦道も付き合う事になった。  と言っても、動いてるのは愛永と邦道の二人だけで、イルはそんな二人を見守っているだけなのだが…。 「良いよー。僕も覚えるの大変だったもん。未だに分かってない事ばかりだし」 「そうなの?」 「うん。たぶん、卒業しても分かんないんじゃないかな。あははははっ」  そう言って笑ったイル。事実、現役の時も適当に仕舞っていた。 「何笑ってんだ。お前が適当に仕舞ってるから後輩達が困ってんだろ」  そんなイルに、邦道が厳しい口調でそう言って、ポコッと薄い資料でイルの頭を軽く叩いてきた。 「いてっ。だってー、幸隆が分かってるから良いかなって。あと、くに君だって分かってくれてたしさー」 「それは俺と幸隆がお前との付き合いが長いから分かるだけで、後の人間にそれを求めても応えられるわけがないって分からないのか……?」  そう言われ、イルは少し間を置いてからヘラヘラッと誤魔化すように笑った。 「お前、そんなんでやっていけるのか? 来年から幸隆と離れるかもしれないんだぞ」 「かも、じゃなくて離れるの! ハハッ、大丈夫だって、幸隆なんかいなくても全然平気だもん」 「……俺にはそう思えない」  そう言って、邦道と、その邦道の隣にいる愛永が心配そうにイルを見詰めていた。
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