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その視線にイルはヘラヘラと笑ってまた返した。
だって、そうしていなければ勘が鋭い二人には誤魔化しきれない。
いや、もう既に誤魔化しきれていないかもしれない。だって、二人の視線があの日から変わらない。
「あいつのにプロ入りが決まって、所属チームも決まった。お前はどうするんだ?」
邦道はイルの今後を心配してか、そう聞いて来た。その質問は二度目で、一度目は幸隆の将来を決める大切な日が終わった直後だった。そう。あの有名な会議。
「え? 僕? 僕は……まだ何も決めてない」
「それ、先月も言ってたな。そろそろ何処の大学に行くか決めないと駄目なんじゃないのか? お前くらいだ。まだ進学先決めてないの……」
「って、担任に言われたんでしょ? 早く決めさせろとでも言われた?」
「あぁ。連日でな」
「アハッ、ごめんねー。くに君にまで迷惑掛けて。でも、ごめん。まだ何も決めてないんだ……冬休み明けには確実に決めるから。ね、許して」
「それは俺に言う事じゃない。担任に言え」
「ははっ。そうだよねー……」
イルは担任が邦道に頼るほど切羽詰まっている事は知っていた。けれど、まだ答えは出ていなかった。
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