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ださなきゃいけない。そんなの自分が一番分かっている。でも、分からない事だらけなのだ……。
今まではイルが進む道を幸隆が追って来てくれて、それが当たり前の事だった。
そうされる事で、幸隆の気持ちがまだ自分にあると思えた。それに安堵してた。
けれど、今回は違う。
幸隆は自分の道を先に決め、進んで行った。
イルの気持ちなど一度も聞かず、自らの夢を成し遂げる道に進んで行った。
そこにはイルはいないのに。
「潮時なのかな……」
「イル……?」
幸隆の気持ちに胡座をかき続けていた報いが今来たのかもしれない。
ここが潮時。そう、幸隆はイルに言わないだけで伝えようとしているのかもしれない。
そう思うと、イルは自分の道が分からなくなり、決める事ができない。
幸隆がいない場所に行っても意味が無い。
側にいてくれたから、幸隆の気持ちを知りながらも受け入れなくても大丈夫だと思えた。
でも、側にいなくなったら、幸隆がどんな風に人と関わるのか分からない。
もしかしたら、新しい恋なんかして、そのまま……なんて事も。
「イル、何か悩んでる? 進路だけじゃなくて、他にもっと大事な……」
そう、愛永がイルに聞いて来た瞬間、ガラガラっと扉が開いた。
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