第1章 可愛いの魔法

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 だから、その言葉は幸隆が本当にそう思ってくれたからこその言葉だと、イルには分かった。  分かったからこそ嬉しかった。  幸隆はイルの事を、ちゃんとイルとだけ判断してくれている。  例えイルが女の子の格好をしていても、似合っているか似合っていないかで判断してくれる。  そんな幸隆が、イルの心を何度も救ってくれていた。 「ほら、ドア閉めるよ」  ルイは中に入って来ないイルにようやく気付き、そう言って顔を出した。そして、去って行く幸隆の後ろ姿を見付ける。 「あの後ろ姿って幸隆?」 「う、うん」 「えー、言ってよー。私も幸隆にこの服見せたかったー」 「ご、ごめん」 「もー、イルばっかりいっつも幸隆を独占しててずるい」  ルイはそう言うと頬をぷくっと膨らませ、シートベルトを締めた。  イルもその後すぐにシートベルトを締め、ルイに何度もごめんねっと告げた。けれど、ルイは直ぐにころっと表情を変え、笑みを浮かべる。  その心理が分からず、イルはルイの横顔をただ見詰めながら、ルイが話すのを待った。 「でもいっか。私、来年から幸隆がいる野球チームに入る事になったから」 「え……?」  その言葉にイルは驚く。  まさか、ルイが幸隆と同じ野球チームに入るなんて知らなかった。  そんな話し一度も耳にしていない。 「パパにお願いしたら良いって。ママも頷いてくれた」 「そ、そんな話し聞いてない……」 「だって、イルには関係ないじゃん。幸隆にもまだ言ってないし」 「でも……ぼ、僕だって……」  幸隆と同じ野球チームに入りたかった。 「イルは野球なんてできないでしょ? スポーツだってできないじゃん。運動音痴なんだから」 「……」  そうキッパリ言われ、黙るイル。
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