第5章 底のない愛

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 イルは告白の現場を何度も見た事がある。と言うよりも、二人でいる時に女子が幸隆を個人的に呼び出し、然程離れていない距離で告白をするのだ。  そこの近くにイルがいるのに、イルの存在など御構い無しに……。  たぶん、ただの金魚の糞のようにしか思われていないのだと思う。  女の子よりも女の子らしく、こんなにも可愛い見た目だと、女性としては面白くないらしい。  学年が上がる毎に嫉妬ややっかみが増えた。  ちゃんと受け入れてくれる子は多いけれど、それでもごく一部の人間はこんなイルを煩わしいと思っているらしく、何度か嫌がらせを受けた事もあった。  それでもイルはその事を幸隆にも、誰にも話した事は無かった。  だって、その嫌がらせをしてくる子達は皆幸隆のファンの子達で、そうされる事は別に苦では無かった。  下駄箱の中に〝オカマ〟と書かれた紙を何回も入れられても、通りすがりに足を掛けられても我慢できた。  それをされる事でルイの存在を感じれたのだ。 (ルイ……元気かな……)  ルイの気持ちがこの子達と同じだと思うと自分の気持ちに蓋をし続けれた。  開けてはならないパンドラの箱。  底のない愛は止まる事は無く、ずっと幸隆へと流れ続けていく先がない気持ち。
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