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幸隆が面倒見の良い男だとは知っているが、あまり関わりの無かった大樹を気にかけるくらいマメな性格かとは言えばそれは違う。だからこそ、尚更気になった。
「で、イルはその告白どうしたんだ?」
「え? ちゃんとお断りしたよ。ごめんねって」
「ふーん。じゃ、幸隆は?」
「俺? 断るに決まってるだろ。好きでもない女と付き合っても意味は無い」
「!」
そうハッキリと告げる幸隆。その言葉にドキッと身体が動いてしまうイル。
そんなイルを、邦道と愛永はどうしたものかと互いを見詰め合い、目で会話を始めてしまった。
二人はどうにかしてイルと幸隆をくっつけようとしてくれているのだが、その気持ちにイルが応える事ができず、二人をガッカリさせてばかりいた。
「お前らさ……。いや……なんでもない」
邦道は何かを言おうとして直ぐに止めた。
これ以上口を挟んでも、イルが素直に自分の心を曝け出すとは思えないからだと思う。
「そろそろ帰るか。幸隆も来たし、後は後輩達の仕事だ」
「で、でもまだ途中……」
「後輩達だって何処に何があるかを自分達で動いて把握する必要もある。イルが適当に仕舞ったのを元に戻せただけで十分だ」
「アハハッ、なんかごめーん」
「さ、帰るぞ」
邦道のその言葉に、イル達は生徒会室を出る事になった。
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