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愛永と邦道は職員室に鍵を返しに行くからと、そのまま職員室へと行ってしまった。
イルと幸隆は先に下駄箱に行ってようと話し、無言なまま人がまだ残る下駄箱へと向かう。
無言なんていつもは平気なのに、なんだか今は落ち着かない。
何か話さないと。そう、何故か思ってしまう。
「せ、先輩!」
「?」
すると、少し前方にいる黒髪ロングヘアーの女の子が幸隆に向かってそう叫んだ。
その声に、イルと幸隆はその場で止まった。
「あ、あの……」
女の子の上履きを見ると色が赤。二年生だと見て分かった。それに、その子には見覚えがあった。
確か、今年の文化祭のミスコンでグランプリを取った子だ。
「あの……私……」
その子は静かに幸隆の方に近付くと、周りに人がまだいるにも関わらず、頬を染めて下を向いた。
何処をどう見ても告白タイム。
隣にイルがいるのに……。
「いっ、一年の時から先輩の事だけ見てました! 私と付き合ってください! お、お願いします……」
女の子は幸隆の目を真剣に見詰め、そう言葉を告げた。その大公開告白に、周りは囃し立てる。
こんな風に人目がある所で告白するなんて、度胸がいる。いや、自身があるのかもしれない---私は絶対に振られないと。
「せ、先輩の事本当に好きで、私……先輩しか……」
愛せません。そう泣きながら女の子は幸隆に告げた。
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