第5章 底のない愛

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 愛永と邦道は職員室に鍵を返しに行くからと、そのまま職員室へと行ってしまった。  イルと幸隆は先に下駄箱に行ってようと話し、無言なまま人がまだ残る下駄箱へと向かう。  無言なんていつもは平気なのに、なんだか今は落ち着かない。  何か話さないと。そう、何故か思ってしまう。 「せ、先輩!」 「?」  すると、少し前方にいる黒髪ロングヘアーの女の子が幸隆に向かってそう叫んだ。  その声に、イルと幸隆はその場で止まった。 「あ、あの……」  女の子の上履きを見ると色が赤。二年生だと見て分かった。それに、その子には見覚えがあった。  確か、今年の文化祭のミスコンでグランプリを取った子だ。 「あの……私……」  その子は静かに幸隆の方に近付くと、周りに人がまだいるにも関わらず、頬を染めて下を向いた。  何処をどう見ても告白タイム。  隣にイルがいるのに……。 「いっ、一年の時から先輩の事だけ見てました! 私と付き合ってください! お、お願いします……」  女の子は幸隆の目を真剣に見詰め、そう言葉を告げた。その大公開告白に、周りは囃し立てる。  こんな風に人目がある所で告白するなんて、度胸がいる。いや、自身があるのかもしれない---私は絶対に振られないと。 「せ、先輩の事本当に好きで、私……先輩しか……」  愛せません。そう泣きながら女の子は幸隆に告げた。
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