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そんな彼女を、イルはなんて可愛い子なのだろうかと思った。少し強引かもしれないけれど、それくらい幸隆の事が好きだと言う事だ。
ルイみたいに積極的なその部分に、イルは一人羨ましい気持ちで二人を見詰めた。
自分が女の子だったらこんな風に人目を気にせず告白できたのかもしれない。
なんて、できないくせにそう思ってしまう馬鹿な自分。
「……俺しか?」
「え? は、はい!」
「なら、俺の何処が好きなんだ」
「え……?」
「幸隆……?」
イルはその言葉に幸隆を見詰めた。幸隆がいつもと違う反応を見せたからだ。
「そ、それは……」
「俺がプロになるからか? それともこの顔か?」
「ち、違いますっ! 私は先輩の優しそうな性格が……」
「優しそうね……」
「ゆ、幸隆……?」
幸隆はその言葉に表情を変えた。それを見て、イルは咄嗟に幸隆の袖を掴む。
「女の子にそんな顔しちゃ駄目だよ……」
そして、小声でそう幸隆に伝えた。その言葉に、幸隆は盛大な溜息を吐いた。
「せ、先輩……?」
「悪いな。ちょっと虫の居所が悪かった……」
「い、いえ……」
「……俺には生涯側にいて欲しい人間がいる。この気持ちは一ミリも動く事はない。だから、諦めてくれ」
「!」
「そ、そんな……」
幸隆はそうハッキリと彼女に告げると、イルの手を掴んでスタスタと歩き出す。
振った彼女に対して労りの言葉もない。
「ゆ、幸隆っ」
「そ、それは誰なんですか! 教えて下さい!」
彼女は幸隆の返事が信じられなかったようで、幸隆の背にそう言い放った。
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