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その言葉にイルはドキッと心音を大きくさせた。
幸隆はなんて言うのだろうか……そう思ったのだ。
「あんた本当に俺の事好きだったのか?」
「え……?」
「俺の事を好きだったんなら、俺が一番愛してる人間の事も分かるはずだ」
幸隆はそう言い捨てると、イルの手を引きまた歩き出した。
「ゆ、幸隆! なっ、なんであんな事!」
イルは幸隆のその発言に赤面してしまう。あんなに人がいる前にそんな大胆告白。勘が鋭い人間なら気付いてしまう---幸隆が誰を好きなのかを。
「あんな事? 普通、好きな奴の好きな人間くらい見てたら分かるだろ」
「で、でも……」
「でも? お前だって俺の好きな奴が誰なのか分かってるだろ?」
「!」
「俺はお前の好きな奴も分かってる」
「……幸隆」
イルはその言葉にどうしたら良いのか分からなくなる。
この手を離して悪態をついた方が良いのか、それとも、自分の気持ちに素直になった方が良いのか。
もし、自分の気持ちに素直になったら、幸隆はどんな顔を見せてくれるのか……今、どうしようもなく見たい。
「僕……顔に出てる?」
「あぁ。お前の顔を見てれば分かる」
「っ……」
握られた手が熱い。顔も身体も全てが熱い。
(どうしよう……すごく好きだ……)
心は泣きそうなくらい締め付けられ、握られた手を無意識に強く握り返してしまうイル。
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