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決意を固めたあの日から一週間。なかなかどう気持ちを伝えれば良いのか分からなくて、イルは一人悩んでいた。
長年の両片想いの状態が長過ぎて、言葉にするのが恥ずかしくて、時間が経つと尚更言いにくくなっていたのだった。
けれど、そんなイルにメールが届く。幸隆からだ。
「苺大量に買ったから持って行く……か」
苺なんて甘い物好きじゃないくせに、幸隆はそれを大量に買ったと記している。
たぶん、イルに会うための口実だ。
この一週間会う機会が無くて、幸隆とは会えていなかったから、幸隆から来てくれたようだ。
「言わないと……」
一週間でこんなにも会えない事が辛いのに、これから更に距離が離れるかもしれない。それに耐えられるのかと聞かれれば絶対に無理だ。
幸隆が側にいないなんて、不安よりも恐怖だ。
だから、尚更自分の気持ちを幸隆に伝えるのが必要だった。
そして、自分も幸隆と一緒に付いて行くと、ちゃんと言いたい。これからは自分が幸隆の後を追って行く番だと伝えたい。
「イル様、幸隆様がお見えになりました」
「あ、うん! 部屋に通して!」
「はい。かしこまりました」
使用人のその言葉に、イルはベッドから飛び降りてソファーへと移った。そして、ハートのクッションをギュッと抱く。
「入るぞ」
「ど、どうぞ」
ガチャッと扉が開き、一週間ぶりの幸隆が顔を出す。その髪は更に短髪になっていた。
「髪切った?」
「あぁ。チーム練習が始まる前にサッパリしたくて」
「あ、そっか……」
チーム練習。それを聞き、イルは幸隆が来年からここにはいない事を思い知らされる。そして、幸隆がこれから闘う場所に行く前に、気合を入れる為に髪の毛を切ったのだとイルには分かった。
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