第6章 決意と阻害

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 去年も二人で見に行き、その大きさと美しさに何度も感動させられて、寒さも吹っ飛ぶほど綺麗なツリーだった。  そんなツリーの周りはカップルだらけで、皆自分達の世界に入って肩を寄せ合ってイチャついていた。  そんなカップル達を少しだけ羨ましく思っていたイルだったが、女の子の姿で行けばその気持ちも半減される事を知り、高校に入ってからは常に女装で幸隆と出かける事にした。  だって、女の子の姿で行けば、周りはイルを幸隆の彼女として見るだろう。  それがとても心地良く感じ、優越感に浸れた。  擦れ違う女の子達は幸隆を見て頬を染め、隣にいるイルを見て舌打ちをする。最初の頃はそれをされて腹が立った時もあったけれど、それも嫉妬だと思うと余裕が持てた。  嫉妬されるほど、自分が幸隆の隣にいるのが不自然ではないと言う事だと思ったからだ。  ちゃんと女の子に見えてる。そう思うと自信にも繋がった。 「何着て行こうかなー。幸隆、リクエスト言って」 「リクエスト?」 「そう。どう言うのが良いとかない? それ言われた方が選ぶの楽だから」  と、言うのは口実で、本当は幸隆の好みの服を着て行きたいからの言葉だった。 「楽? そう言う物か……なら、あれ着て」  そう言って開いたクローゼットの中を指差し、そこに並んだ一つのワンピースを見詰めた。 「あれ? あれってあの白いワンピース?」 「そう。あれ着たお前が見たい」 「わ、分かった」  そうハッキリと言われたら照れてしまう。
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