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自分で聞いたくせに何を照れているのやら。イルは自分の頬にそっと触れ、その熱さに手を仰いだ。
「でも急になんでそんな事きいて来たんだ? いつもはそんな事聞いて来ないのに」
「え? あ、なっ、なんとなく……」
イルはその言葉にドキッとなって、慌ててクローゼットを閉じた。そして、パタパタと幸隆の向かいに座る。
「フッ。なんとなくね……」
「っ……」
幸隆はイルの心理を見透かしてか、そんな風に復唱して来た。そんな幸隆を見て、頬をぷくっと膨らませたイルは、目の前に座る幸隆の顔目掛けて側にあったクッションを投げ付ける。
「急に投げるなよ」
そう言って、笑いながら軽くキャッチした幸隆。
幸せそうだ。
そんな幸隆を見たイルは、意を決してある事を伝えるのだった。
「……その日」
「その日?」
「ちゃんと僕の答え…つ…伝えるから……」
「え……?」
「幸隆とこれからどうなりたいか……ちゃんと」
「!」
クリスマス。巨大なツリーの下でイルは幸隆に自分の気持ちを伝える覚悟を決めていた。
その事を隠して挑もうと思っていたけれど、幸隆の幸せそうな顔を見たら我慢ができなかった。
「イル……」
「のっ、飲み物持って来る!」
イルはこの空気に居た堪れなくなり、慌てて立ち上がって部屋を出た。そして、扉を閉めた瞬間、その場にヘナヘナっと崩れる。
「言っちゃった……」
まだ言うつもりは無かったのに、我慢ができず言ってしまった。
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