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イルは顔を真っ赤に染めながら、むくっと立ち上がって下に降りた。そして、飲み物を取りに行った。
キッチンには誰もいなくて、時間的に買い出しに行ったのだと思ったイルは、自分で冷蔵庫から飲み物を取り、グラスに注いだ。
いつもなら家政婦の誰かが「私がやります!」っと言ってイルがしようとするのを止めるが、今日は誰もいないのでそれを言う人がいない。だからか、何故かこっちが誰かのテリトリーに入っているようで落ち着かない。
そんな時、玄関が突然勢いよく開いた音がした。その音を聞き、誰かが帰って来たのだと分かった。
たぶん、家政婦の誰かが帰って来たようだ。
けれど、足音は一階のキッチンに向かわず、何故か上に上がるような慌ただしい音しか聞こえなかった。
(ん? ママが帰って来たのかな?)
でも、両親は今海外にいるはず。帰って来るのは三日後だ。だから、まだここにあるはずがない。
「ど、ドロボー?」
まさか、そんな……イルは飲み物を持たず、慌てて幸隆がいる二階へと向かった。
すると、二階のイルの部屋が半開きになっていた。
さっき確実に部屋のドアを閉めて来たのに開いているとなると、足音の人間はイルの部屋に入ったようだ。
「幸隆!」
イルは勢い良くドラを開き、中にいる幸隆の名を呼んだ。
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