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胸なんて無くても良いと言っていたルイはもう存在しない。発育したその魅惑の身体を思う存分に活かす方法を学んだらしく、実践しているようだ。
一番、効いて欲しいその人に……。
「胸? そんなのあってもなくても俺は別に……」
「えー! 幸隆男でしょー? 触りたいとか揉みたいとか湧き上がって来る物ないのー?」
「湧き上がって来る物? そんなの無いな」
「なら、幸隆はお尻フェチとか? それとも、手フェチ?」
「フェチ? さぁな。そんなの考えた事無い。つーか、そろそろ座っても良いか?」
「あっ、ごめーん。どうぞどうぞ」
「たくっ……くだらない事ばっか言うなよ。お前らしくない」
「へへ、ごめん。でも、それくらい必死って事だから……許してよ」
そう言って、ルイがイルをチラッと見詰めた。その瞬間、バチッと視線が重なってしまった。
「っ……」
その目から伝わる威圧にイルは怯んでしまい、声が出ない。
「ねー、イル。何か飲み物持って来てよー。私、オレンジジュースが飲みたいなー」
「……う、うん」
その目は双子の弟を見ている目ではない。ライバル相手を見ているような、そんな肉食獣のような目だった。
その瞳の奥には〝お前には絶対負けない〟と書かれているのではと思うほど力強く、自信に満ちた物だった。
それくらい、ライバル心が伝わって来た。
「手伝うか?」
「え……? 大丈夫だよ。幸隆は烏龍茶で良いよね? あっ、あと貰った苺洗って来るね」
そう言って、イルはルイに言われた通りにキッチンへと向かおうとする。
「ねー、聞いてよ幸隆ぁー」
そんなイルを見計らってか、ルイが幸隆に甘えた声で話し掛ける。
なんの話しをするんだろう---そう思いながら、イルはキッチンへと向かった。
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