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キッチンから飲み物を運んでいる途中。ドアの向こうで会話が聞こえた。その会話に、イルの動きがピタッと止まる。
「えー、クリスマス予定あるの? 私も一緒に行きたい!」
「部活の奴等と飯だから、ルイは来れるわけないだろ」
話しの内容はクリスマスに関する事で、たぶん、クリスマスの予定をルイが聞いて来たみたいだ。それを、幸隆が断っている最中にイルがドアの前に来てしまったようで、ドアの向こう側では二人が揉めてるような言葉が飛び交っていた。
「じゃ、キャンセルすれば良いじゃん! 幼馴染が帰国して来たんだ。ごめんって。これなら皆納得するよ!」
「そんなわけいかないだろ。先約が優先だ」
「そんなー……」
ルイが口元を尖らせているのが見なくても分かる。そんなルイの声を聞き、ホッとしている自分がいる。
幸隆が嘘を付いて、自分との約束を守ってくれた。それが不謹慎にも嬉しかった。
「その部活の集まりにイルは行くの?」
「イル? イルは来ない。アイツは野球部じゃないからな」
「へー、ならイルもクリスマス一人かー」
その言葉に、ピクッと反応する幸隆。
「いや、アイツは友達と約束があるって言ってたぞ。その日は二人で映画でも観に行くって話しを聞いた」
幸隆はルイがイルを誘わないようにと思ったのか、そうルイに嘘を付いていた。それを聞き、少しだけ笑ってしまうイル。
珍しく幸隆が焦っているのが声で分かったからだ。
「イルに友達? そんなのいるの?」
「いるに決まってるだろ。なんでそんな事を言うんだ?」
「だって、イルって男じゃないじゃん。昔から女の子みたいに可愛くてさ……そんな子って、同性にも異性にも好かれるとは思えないじゃん」
「……それ、本気で言ってんのか?」
「実際、昔からイルって友達って言える子は幸隆と邦道しかいなかったし。今は違うってなんか思えない……」
その言葉に、イルは少しだけ泣きそうになる。
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