第1章 可愛いの魔法

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 イルだって幸隆が好きだ。  昔から幸隆だけが好きだった。  でも、イルは男の子。幸隆にとって友人以上の特別には絶対になれない。  だから、言わない。この気持ちはずっと、ずっとずっと言わない。 「ねぇ、イル。イルは好きな子とかいないの?」 「え……?」  突然の母親からの質問に、イルは窓を見ていた視線を母に向ける。そして、いないよ、と告げた。 「ならイル。その格好でモデルしない?」 「え……?」 「好きな子なんていないなら恥ずかしさなんてないでしょ? 本当はルイに来てたんだけど、この子ほら、こういう格好してくれないでしょ。だから、ママずっと困ってたのよ」 「で、でも僕なんて……」 「今時、男も女もないわよ。ね、パパ」 「そうだな。親父は昔気質だったから厳しかったけど、パパ達はそういうの気にしないし。イルがしても良いならして欲しいな」 「でも……あの……」 「きーまり。小鳥遊さんも喜ぶわ。後で詳しく打ち合わせしないと」 「ママ……」  イルは両親にそう言い切られ、この話しはイルの気持ちを無視し進む事となった。  でも、数時間前のイルなら泣いてでも嫌だと言っていただろうが、今は不思議とそれは無かった。
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