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イルだって幸隆が好きだ。
昔から幸隆だけが好きだった。
でも、イルは男の子。幸隆にとって友人以上の特別には絶対になれない。
だから、言わない。この気持ちはずっと、ずっとずっと言わない。
「ねぇ、イル。イルは好きな子とかいないの?」
「え……?」
突然の母親からの質問に、イルは窓を見ていた視線を母に向ける。そして、いないよ、と告げた。
「ならイル。その格好でモデルしない?」
「え……?」
「好きな子なんていないなら恥ずかしさなんてないでしょ? 本当はルイに来てたんだけど、この子ほら、こういう格好してくれないでしょ。だから、ママずっと困ってたのよ」
「で、でも僕なんて……」
「今時、男も女もないわよ。ね、パパ」
「そうだな。親父は昔気質だったから厳しかったけど、パパ達はそういうの気にしないし。イルがしても良いならして欲しいな」
「でも……あの……」
「きーまり。小鳥遊さんも喜ぶわ。後で詳しく打ち合わせしないと」
「ママ……」
イルは両親にそう言い切られ、この話しはイルの気持ちを無視し進む事となった。
でも、数時間前のイルなら泣いてでも嫌だと言っていただろうが、今は不思議とそれは無かった。
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