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その音に気が付いたが既にもう遅く、イルは立ったままの状態で幸隆を迎えた。
「お前はいつまでそこで立ってるつもりだ?」
「き、気付いてたの……?」
幸隆はドアを静かに開くとイルがそこに立っていたのを知っていたらしく、イルの手から飲み物が置いてあるトレーを奪い、座っていた席へとまた座った。
その顔はさっきの会話なんて無かったかのような、そんな至って普通な顔をしている幸隆に、イルは一人、拍子抜けしてしまう。
ほんと、幸隆には敵わない。
「ほら、オレンジジュース」
「ありがとー」
「礼はイルに言えよ」
「イル、ありがとー」
と、ルイはイルに言ったが、その目は笑ってなどいなかった。
敵意剥き出し。
〝あんたには負けない〟そんな声が頭の中で聞こえる。
イルはそんなルイを見詰め、〝僕も負けない〟そう伝えたのだった。
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