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そして、ふと、一人の男が浮かび上がる。
「もしかして……大樹?」
「はい! そうッス! メールしてる仲なのに、俺の顔は忘れたんですか?」
「えっ!? でも、今海外に……」
「ルイが日本に帰国したのを聞いて、俺も帰国したくなって。あー、久しぶりの先輩だぁー」
「わぷっ! ちょっ、急に抱きつかないで……っ」
「あっ、すんません。でも、嬉しくて」
大樹は昔と変わらずマイペースで、自分の欲求に躊躇いもなく行動する所が未だに健在のようだった。
イルの反応を気にする事なく抱き付いて来た。でもまさか、ここに大樹が来るなんて……イルは未だに信じられない顔を大樹に向ける。
「で、でもビックリ……大樹がここにいるなんて」
「いやー、ルイから先輩がまだ独り身って聞いて、俺の付け入る隙がまだまだあるって言われたんで来ちゃいました」
「え……?」
それって、どう言う意味? イルは、大樹の隣にいるルイを静かに見詰めた。
「だって、事実でしょ? あんた、まだ幸隆と付き合ってるわけじゃないし。大樹にだってチャンスはまだあるって伝えてあげたの」
「なんでそんな……」
確かにまだ付き合ってはいないけれど、でも、そんなのわざわざ大樹に言う必要なんて無いはずだ。なのに、ルイはイルと幸隆との間を掻き乱す手段として、大樹の気持ちも利用しようとしてるのだ。酷過ぎる……。
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