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そんなイルを一部始終見ていた邦道が、横で間に入ってくれた。
「ルイ。お前まだ幸隆の事諦めて無かったのか? いい加減、幸隆の好きな奴が誰なのか認めたらどうだ」
「あー、邦道だ。おひさー。って言っても久しぶりに会った友人に辛口な事言うのは酷いなぁー」
「酷いのはお前だろ。掻き乱すな」
「掻き乱す? そんな事してないよー。ただ、幸隆には誰が相応しいのかちゃんと分かって貰いたいだけだもん」
「それが掻き乱すって言うんだよ……」
「でも、大樹はずーっとイル一途でいたんだよ。応援しない人間なんていなくない?」
そう言って、大樹にニコッと笑うルイ。その笑みに、笑みで応える大樹……この二人は何処か似ている部分があるようだ。
だからこそ、こんな風に掻き乱すような事を平気でできるのだと、イルも、そして邦道も思った。
「あっ、そろそろ試合始まる。さっ、詰めて詰めて」
ルイはそう言うと、皆を左に寄せてスペースを強引に空かせ、その場所に座った。勿論、大樹もイルの右に座り、試合なんて気にする事なくずっとイルの顔を見詰めていたのだった。
その視線は熱く、気にしないようにしなきゃと思うけれど、それが出来ないほどねっとりと見られているのが伝わって来て落ち着かない。
「イル」
でも、そんな視線が気になっていたのに、幸隆に名前を呼ばれた瞬間にはそんなのどうでも良くなった。
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